俺の名は俊。高1だ。そして三日前から人殺しでもある。そのせいで誰も寄って来ないがむしろ都合がいい。いや、一人俺に近づいて来る奴がいる。有樹だ。光一がいない今一番信用出来る奴だ。・・しかし今は誰にも寄って欲しく無かった。なぜなら三日前に人を殺した後、俺は・・・・・殺人の快感を覚え、殺人願望を抱いてしまっているからだ。同時に自殺願望も抱いている。俺は、このままじゃ人を殺しかねない、ならば殺す前に死んでしまった方がいいのではないかというのが理由だ。それからもう一つ、変わらないがもし殺す相手が有樹だと思うととてつもなく怖いのだ。だから俺は避け続ける。
「じゃあまた明日!」
「じゃあね!」
等と皆が挨拶を交わす中俺は誰にも気づかれない様に教室を出た。すぐ家に帰ろうとしたが、有樹に追いかけられそうだから今日も靴を履き適当な所に隠れる事にした。
そして着いた所は、体育倉庫の裏だ。ここはいつも誰も来ないからたまに俺は一人でやって来て物思いに耽ることがある。勿論有樹と光一にすら話した事はない。いわゆる秘密の場所という物だ。
数分して下駄箱に行き有樹の靴が無い事を確認して、やっと家路についた。三日前から分かっていることだが。いつもは三人だから気づかないが一人だととても寂しい。周りに緑が広がっていて俺の心を癒してくれる様だが、今の俺にはそんなことは慰めにもならない。そして今聞こえるのは俺の足音と風の音。そしてボールが跳ねる音。・・・・・ボール?
ポンッポンッポン
軽やかな音で跳ねて来るボールが俺の方に向かって来た。その先を見るとまだ6歳ぐらいの子供が近寄って来る。放っておこうと思ったが、こんなに近くにあるのに拾ってあげないのは酷いと思い拾ってあげる事にした。
「はい」
そう言いながらボールを子供の手に乗せる。
「ありがとうおにいちゃん」
悪い気分はしなかった。いやするはずがなかった。しかし。
「そんなにかなししそうなめをしてどうしたの?」
そう言われて俺の顔は一瞬曇った。しかしすぐにいつもの表情に戻り、俺は出来るだけ優しくしようと心がけ、ゆっくりとそれでいて優しい声を掛けてあげた。
「なんでもないよ。もう遅いから、早く家に帰った方がいいよ」
「うん」
そんな会話をした後、子供は家に帰り始めたが、俺はそこに立ちつくしていた。先ほど言われた事が気に掛かっているのだ。そして子供が見えなくなった時。
「大人しくしろ!!この!」
知らない男の声とさっきの子供の悲鳴が聞こえた。その瞬間俺は自分でも気づかずに走りだしていた。少し走った時、男とさっきの子供がいた。子供は縛られ猿轡(さるぐつわ)がはめられている。俗に言う誘拐と言う奴だ。
「その子を離せ!」
(なんて俺は、運が悪いのだろう。)
そんなことを思いながら言った。j実際運が悪いどころの問題でもないが。
「あ?誰だお前は?離せだと?せっかくの金蔓を離す訳ねーだろ!!」
そう言いながら犯人が向かって来た。
「がは!」
いきなりの事に対応できず、俺はもろにパンチを腹にくらった。そしてその後殴る蹴るをくりかえされた後俺は倒れた。多少はっきりしない意識の中、奴の台詞を聞いた。
「けっ。仕事の邪魔しやがって。俺の生活がかかってんだよ。このお坊ちゃんは結構な金持ちの息子だからな」
そう言い捨てて去ろうとしている男と泣いている子供を見た。子供の顔は恐怖で一杯だ。
(・・・また、また俺はなにもできないのか?)
ドクン
心臓の音が嫌によく聞こえる、そしてこの前のように俺の周りに黒い影が見えだした。
(また誰かが人の命をもてあそぼうとしているのを止められないのか?)
ドクン
(さっき俺が一緒に行けば捕まらなかったかもしれないのに)
ドクン
(犯人が憎い・・・何も出来ない、何もしなかった自分が憎い!)
ドクン
(こんな思いをするなら誰もいなければよかったんだ!ソウダダレモイナケレバ)
ドクン!
そんなことを思っていると突然俺の頭の中に声が聞こえて来る。
―ほう、今から滅ぼそうと思っていた世界にこんな人材がいるとは、しかも憎しみと失望を兼ね備えているとは―
(誰だ!)
―誰だだと?そんなことどうでもよいでないか。そんなことよりお前はこの世界が憎いか?―
(憎い!誰もいなければ俺はこんな思いをせずにすんだのに!)
―フフフ、そうかならば力をやろう。闇の力を、そしてすべてを壊せ、殺せ!―
そんな声が聞こえた後俺の周りの黒い影がはっきりし傷が全て治り、右手には漆黒の剣が握られていた。
―その剣、ヴァンパイアブレードと闇の力で全ての憎い物、消したい物を壊し殺せ!―
俊は、ゆっくりと立ち上がり犯人が逃げた方に走って行きそして犯人を見つけた。
「おい」
犯人が俊に気付き、次には驚愕していた。なぜなら先ほど殴った傷がすべて治っており、さらに右手には剣が握られているからだ。
「おっおい!待ってくれよ!子供は離すから!お願いだ!助け!」
「ぎゃああああああああ!!!」
犯人が悲鳴を上げた。俊に刺されたのだ。しかも剣は犯人の体から血を吸い、犯人は干からび、剣は大きくなっていた。次に俊は子供の方を見た。子供は恐怖で震えている。無理もない。
だがそれだけでは終わらなかった。俊は再度剣を構え、そして。
「死ね」
子供に剣を振り下ろした。・・・・・が、剣は子供には当たらず、隣の岩に突き刺さる。
「クソ!」
気が付けば俊は汗びっしょりである。そして子供は気を失っていた。
俊は子供を後にし帰ろうとしたが、突然周りに闇が現れ俊を包みこんだ。そして闇が消えた時には俊の姿は無かった。
デスティニーアイランドは今8時を回ろうとしている。
そしてここはリクの部屋、リクは特にやることが無かったので、いつも通りベットに寝そべり考え事をしていた。
(ソラのキーブレードが消えない理由、それを意味するのは・・・・闇はまだ生きている?いや。そんなはずは無いよな。・・・・そうだよな、王様)
リクは、半ば願いの様に思っていた。が、リクの考えは皮肉にも当たっている。その証拠にリクが外を見た瞬間眼に写った物は、
「あれは、2年前と同じ闇!?」
である。リクは急いでボートを用意し小島に向かった。小島に着いたときに一艘の小舟が止まっている。ソラのであるがそれをリクは知らない。しかし長年ソラと一緒にいるリクは、ソラのだと瞬時に予想した。
(多分この船はソラだろうな。あいつが一番闇に敏感に反応するだろう。しかし!)
「一体何が起きているんだ!?それに・・・・ソラは何処だ!」
リクはそう言いながら闇に包まれた島を走りだした。走り回って数分すると後ろに気配があるのに気付き足を止める。
「リク!」
後ろから声が聞こえた。カイリだ。急いで来たのだろう。息が荒い。
「カイリ!」
「リク!ソラは!?ソラは一緒じゃないの!?」
「今探している所だ!ソラが闇に反応しない訳がない!」
刹那
うわあああああああああ!!!
「「ソラ!!?」」
リクとカイリは、声のした方に走って行った。
「「ソラ!!」」
眼の前には血だらけのソラと黒い影が立っていた。
「来るな!」
そう言われても血だらけの親友を放っておける程の絆をリク達は持っていない。
「ソラ!一体何が!?」
「分からない、けど突然ハートレスが現れたんだ!」
ハートレス、2年前ソラが全て倒した筈だった奴等だ。だが目の前にいるハートレスは、少し異様な感じがする。威圧感と言うか何と言うか。とにかく重苦しい感覚に襲われる。そしてハートレスが口を開いた。・・・・口?口など無いはずだ。しかし現にいま喋り出そうとしている。
「ワレハハートレスデハナイ、アンナヨワイヤツラトイッショニスルナ」
「「「喋った!?」」」
そう、やはり喋れたのだ。本来ハートレスには心が無いのだから喋れる筈は無いのに。
「ワレワレハノーバディ、アルカタニツクラレタモノダ!」
「ノーバディ?存在しない物?ある方って誰だ?」
「ワレラヲツクラレタカタノナハカオス。ソシテワレラノシュジンハ・・・・」
「アンセム」
今、二つの世界が滅びようとしている。