―ここはどこだ?―
有樹は真っ暗な所にいた。しばらくすると暗闇に光りが射し込み周りの様子が見えてきた。
―ここは、学校?―
そうここは、学校の教室である。しかし有樹以外誰もいない。いや一人いる。俊だ。俊はただずっと有樹のことを見つめている。そんな俊に有樹は聞いた。
―あれ?俊、何やってるの?―
しかし俊は答えない。かわりに何かゾクッとする感覚が帰ってきた。殺気だがそれが何なのかは有樹には分からなかった。
―おい。俊答えろよ。何やってんだよ?―
有樹は気づいて無かった、俊の右手に漆黒の剣が握られていることに。そして気づいた時には俊は有樹に飛びかかっていた。そして有樹に剣を振り下ろした。
鈍い音が聞こえた。・・・・有樹がベッドから落ちたのだ。
「痛って!!」
痛くて当然だ。なぜなら有樹のベッドは2段ベッドと同じぐらい高いのだから。そして下にはタンスなどが置いてあり、部屋のスペースを広くしている。
「あれ?教室じゃない?ここは・・・俺の家か」
状況を判断するのに少し時間が掛かった。そして有樹はホッと胸をなで下ろす。なにせ俊に切られる夢を見たのだから。
有樹の部屋の中を少し説明しよう。まずベッドはさっきも言った通り2段ベッドと同じ高さで、下にはタンスと本棚が収まっている。次に机、机の上は散らかっている。しかし置いてある本は全て教科書だ。宿題をやっていたようだ、開いてあるノートには数学の数式が書いてある。その次に・・・・これだけだ。この年頃なのだから、漫画、ゲームなどを置いてあっても良いはずだ、しかし何もない。・・・・実は漫画やゲームは全て没収されていた。何でも、勉強を余りにもやっていなかったらしい。
「さて、今日も1日頑張るか」
何かのCMのような台詞を言いながら、すぐに着替えて台所に行った。しかし有樹は、気づいてなかった。今が朝の5時で誰も起きてないということに。変な夢を見た所為で時間間隔が狂っているのだ。
「あれ?なんで母さんと父さんがいないんだ?」
外は暗いが、有樹はそれに気づいていない。時計を見ないのは性格だろう。マイペースという時間を気にしない性格。
「まあいいや、取りあえず朝飯作ろ」
この家では、料理は全て有樹が作っている。そう、父親の弁当も・・・。母の昼飯は除くが自分の弁当も作っている。因みに家に帰ったらまず家事が待っている。もう一、母親は買い物に行く以外は、一日中家でぐうたらしている。親と呼べるのか疑問であるが、この家庭はそれで通しているのだろう。そして有樹がやっと朝ご飯を作り始めようとした時だ。
「あれ?まだ5時じゃん」
気づいた。普通の人なら直ぐに気づくような事に。
「いいや、じゃあまた一眠りしよ」
良くない気もしなくは無いが、そう言ってベッドに戻った。しかしさっきの夢が気に掛かったのか、結局寝れなかった。
「寝れん!」
6時半、1時間半たった今初めて口にした眠れないの言葉。普通の人ならベットから出て何かをしているだろう。
「いいやもう飯作ろ」
そして、またご飯作りに戻った。ご飯が出来た時ちょうどよく両親がでてきた。・・・臭いにつられたのか、それとも起きる時間がいつもこのぐらいなのか。
因みに子供が変なら親も変だ。母親はさっきも言った通り家事のほとんどを有樹にやらせほぼ1日中自分はぐうたらしているのだ。そして父親だが。まず言っておく事は、有樹の名付け親は親戚だ。なぜ親が名付けなかったというと。この親父が最初有樹の名は、「有機物の有機から取ろう」と言ったらしい。その話を有樹が聞いたとき、なぜ!?と思ったらしい。・・・当たり前だが。そしてその後親戚がこの親父にせめて有樹にしようと言って今に至る。なぜせめて?と言う疑問もあるが、きりがなさそうなのでやめておこう。
なにはともあれ7時十五分、やっと家を出た。
そして空を見上げ、呆けながら歩いていると突然後ろに気配を感じた。
「おはよ!」
晴天の青空にとてつもなくいい音が響いた。誰かが思いっきり有樹の背中を叩いたのだ。有樹は半泣き状態で後ろをみると茶髪でロングヘアーの少女、花崎 麗(はなさき れい)がいた。
「痛いな。いきなり何すんだよ麗」
「え?何が?」
本人は自覚してないらしい。類は友を呼ぶというが彼女も少しヅレているのだろうか?
そのまま何気ない会話をして学校に着いた。現在時刻は、7時50分。もうすでにほとんどの人が登校し、ざわついている時間……の筈だった。
しかし今日は、いつもと何かが違う。静かなのだ、聞こえるのは風の吹く音と有樹と麗の足音だけ。有樹はその時朝の夢を思い出した。嫌な予感を携えながら二人は校舎に入り、階段を上がって自分の教室の前に立った。その間生徒の姿は一人も見られなかった。不信に思いながらも有樹はドアに手を掛け、教室に入る。
中には、俊だけだった。そう有樹が見た夢と全く同じ状況であった。唯一違うところは隣に麗がいることだけだ。
「お早う俊♪」
有樹は一瞬ヅッコケそうになった、彼女の余りにもマイペースな態度に対して。周りに誰もいないことを全然不思議に思っていない。
「ああ、お早う麗、有樹。……早速で悪いけどさ」
有樹の頭に一瞬朝の夢がフラッシュバックした。
「消えてもらうよ」
その手には漆黒の剣が握られていた。
この瞬間に地球はノーバディの黒に包まれた。
そして今デスティニーアイランドに続き地球も滅びようとしている。