ある城の地下と思われる場所に一人の男がいる。いや、正確には一人ではない。しかし人では無い。闇だ。一言で言えばそうなる。そう、男の前には闇の塊があるのだ。そしてその闇からは黒ずんだ意思が感じられる。男は闇の塊に向かって頭を下げてから話始めた。
「ご機嫌よう、我が主よ」
───ああ、お前か。何か用か?───
男が話し掛けると、闇の塊は声とも言えないような声で返して来た。男は顔を上げ微笑みながら手の平に青い炎を出した。男は若くはなく、見た限りでは五十代半ばぐらいであろう。聡明な顔つきに羽織っているマント、来ている服を見て凛々しく見える。
「はい、ノーバディの準備は着々と進んでいます。今では数は三千を超えています。しかし余りにも弱く、頼り無い。故に深い闇を持った人間達を仲間に引き込もうと思いまして。外出許可を頂きに」
───その事はお前に全て任せてある。好きにしろ。ところで、奴はどうした?───
「ああ。彼は今日ノーバディの実験に失敗しまして、雑魚ハートレスになってしまったので始末しておきました」
彼は悪びれもせずに闇に言った。それに対して闇も笑っているように揺れる。
───ふふふ、わざと失敗させたの間違いでは無いのか?───
「ご冗談を。ただ私がハートレスを放し飼いしているだけですよ」
彼の言葉とともに二人は笑った。闇は笑うと言うよりも揺れているだけだが。
───さて、十三機関の捜索はどうなっている───
「今、ハートレスに探させております。奴等が覚醒する前に片をつけたいのですが、中々見つかりません。もうしばらくお待ちを」
───ああ、奴等は必ず私に害を及ぼす。急げ───
「ええ、それから、例のキーブレードの少年なのですが、まだ彼に勝てる手合いの者がいないのでそちらのほうももうしばらく掛かると思います」
───そうか、奴は必ず十三機関の素質を持っている筈だ。必ず私の野望を邪魔するだろう。そちらも急げ───
「承知しています。それでは、私はそろそろ言って参ります」
───ああ、吉報を待っているぞ───
そして男は城を出た。物語は今から二年後、地球とデスティにーアイランドから動き出す。