そういえば脅迫とか脅しとかに会った事ある?

無い。会っても全て蹴散らしている。

へえ。凄いね。でもじゃあナイフとか突きつけられて身動きが取れなかったらどうする?

そんなことは無い。

可愛くないね。

可愛いと思われたくもない。


ENDLESS DARK Courage 2 〜魔女との再会〜


カーゴシップは思ったよりも速く進んでいた。グミシップよりも大きいのでてっきり遅いかと思ったが。いざ飛んでみるとなかなか速い速度で空を飛んでいる。

空の眺めはウィズの言った通り絶景であった。しかし飛空挺の方が長く飛行してられ、高くも低くも飛べるらしく、それはカーゴシップの数倍も凄いようだ。

下を見ると森や山などの自然が目に入り、特にカイリは楽しそうにしていた。

ウィズの話しだと一昔前は大陸は霧に覆われ、真下を見ても何も見えなかったそうだ。この晴天で絶景の眺めを見るとその話しが嘘のようだが、色々と人に聞いてみるとどうやら本当のようだった。だが結局ソラやノーバディ等の事は全く分からなかったが。

コードがカーゴシップ内を歩いている途中、リクが女性に聞き込みをしているのを見た。それは外から見れば一歩間違えればナンパである。リクが女性にキザな台詞を使ってナンパしているところを何故か想像してしまったコードは思わず笑みがこぼれた。

コードが笑みをこぼしたのを見て、リクはいち早く自分の事だと察し、コードに近寄る。

「今何か考えていただろ」
「い、いや何も」

リクに突然話し掛けられ言葉が詰まってしまった。更に曖昧な答えで更に不審に思われる。

「い〜や絶対俺の事で変な事を考えていただろ」
「別に。考えてどうするのさ?」
「さあな。だけど考えているのならぶん殴るぞ」

笑顔で言われると流石に怖い。と、突然カーゴシップ全体が揺れた。気流が荒れている可能性もあるが、表が騒がしいのでそれは無いだろう。そして騒がしいということは。

「やれやれ。どうやら空の旅でさえ満喫出来ないようだね」
「愚痴言ってないで行くぞ」

頷き、リクの後に続く。表に出ると既にカイリがキーブレードを構え、戦闘態勢に入っていた。ウィズは……側で震えている。本当に魔導守備隊に入っていたのか疑わしい。と言うより、ウィズは勇気が無く、活躍出来なかったから辞めさせられたのではないだろうか。

とにかくそんな事を考える前にまず目の前の男を何とかしなければいけない。目の前の男は身の丈より遙かに長い槍を持ち、目を細め笑いながらこちらを向いている。

「あんた等がリクとカイリにコードだね?」

男が陽気な言い方で聞いてきた。

「そうだ。で、お前は何だ?」
「え?あ、俺?俺は通りすがりの怪しい人」

何となく脱力感を覚える。通りすがりの人が何故自分達を知っているのか。まあその辺が『怪しい人』なのかもしれないが。

「その前に。此処空だぞ。どうやって来たんだ?」
「え、只単にジャンプして。普通じゃない?」
「絶対普通じゃない。っていうか一体お前は何しに来たんだ」

何故こんなにも和んでいるのか疑問に思い、更に脱力を感じながら聞く。すると男は槍を構え、表情を崩さずに振り下ろす。

「あんた等を殺しに」

咄嗟に避けた。三人がいた所は甲板が一直線に抉れている。喰らったらひとたまりもないだろう。が、コードは逃げると同時に男の喉元にソード・オブ・ドリームを突きつけた。

「やっぱ俺みたいな三下に任せるべきじゃねえよ」

ぼそりと冷や汗を流しながら男が言った。

「……取りあえず前の質問に答えて欲しいんだけど?」
「前の質問って?」
「お前が何者かってこと」

思わず溜息がでる。ここまで弱い敵も初めての上にここまで緊張感の無い敵も初めてだ。なんだかもの凄く初初しい。

「ああ、俺の名前の事な。俺の名前はテネシウス。趣味は…」
「そこまで言わなくていい。それよりお前の身体能力が高い訳を言え」

もはやウィズは震えてはおらず呆然と立ち尽くしていた。リクもカイリもキーブレードをしまい、黙視している。

「それは俺がノーバディだからさ。最近はノーバディも真っ黒じゃなくなってきてね。といってもまだ真っ黒のノーバディの方が多いけど。取りあえずノーバディは身体能力が高いのとこの黄色い目が特徴かな」

そう言うとテネシウスは細い目を開き、ハートレスと同じ黄色い目を見せた。その目を見て一瞬コードは切りかかりたくなったが、他にも聞くことがあったので自制した。

「それからお前達はソラと何か繋がりがあるのか?」
「大ありも大あり。俺達の主人がソラ様なんだからな。俺達の求める物は世界征服とかそんなんじゃなくて全ての力だ。力さえあれば何だって出来る」

主人がソラと聞いてリクとカイリの表情が戸惑いに変わった。―――あのソラが?―――と二人で同じ事を考えていた。

テネシウスはそんなリクとカイリを見、更に薄らと笑みを浮かべた。しかしコードに喉を少し突かれ、直ぐに元に戻した。さして変わりはしないが。

ちらりとテネシウスは日の高さを見た。その不可解な行動にコードはさほど興味を示さなかったが、テネシウスが突如質問をしていないのに口を開いた。

「さてさて、そろそろ狡猾な魔女が来る頃かな?」
「狡猾の魔女?」

コードが言った途端、テネシウスの後ろで空間が歪んだ。一瞬隙を見せてしまい、テネシウスはコードのソード・オブ・ドリームを弾き、空にダイブした。

「久しぶりだねぇ?リク」

炎の中から現れた人物はリクを久しぶりと呼んだ。そしてリクも顔を驚愕の表情で埋め尽くしていた。

「何故お前が生きている!?マレフィセント!」