幽霊って信じる?
信じない
何で?
信憑性が無いからだ
じゃあ僕が幽霊だったら?
俺は幻覚を見て幻聴を聞く異常者と言う事になる
酷いね
ENDLESS
DARK Courage 3 〜魔女か亡霊か〜
カーゴシップの上でマレフィセントは薄く笑いながらコード達を見ていた。その表情から何を考えているのかは読み取れず、四人は動けずにいた。
「何故私が生きているかって?リク。お前もしっているだろう?ノーバディを」
「……レオンから聞いた。今此処にいるということはお前がソラを操っているのか?」
マレフィセントはその問いに曖昧に微笑むだけだった。浮いている状態でコード達の前に移動し、カーゴシップ船上に降り立ち、コード達を見据える。
突然、マレフィセントは杖を前に突き出し、そこから電撃を出した。余りの速さに反応は遅れたが、幸い三人は掠っただけである。ウィズと言えば、被害が少なそうな所で屈んで彼等を見ている。
「ソラ、あの子は自分からあの勢力に入ったんだよ。私もそうだけどそれは利用しているに過ぎない。今度こそ世界を闇に染める為にねぇ」
今度は杖を掲げると杖の先からでは無く、上空から大量の雷が落ちてくる。コードはそれらを紙一重でかわし、後ろに下がる。そしてソード・オブ・ドリームを突き出し、先端から炎を放つ。ファイガの威力は申し分無く、雷を受けても打ち落とされずにマレフィセントに一直線に向かっていく。
マレフィセントは前方から跳んでくる炎を物ともしないように佇んでおり、再び杖を突き出し、向かってくる炎に向かって緑色の炎を放った。緑色の炎とファイガがぶつかり、どちらも消滅すると思った矢先、緑色の炎がファイガを吸収し、更に巨大になってコードの元へ向かって行く。
コードは先程雷を避ける為に後ろに跳んでいるところだった。直撃すると思われた時、コードの前方、少し下の方からリクが前に立ち、瞬時に緑色の炎を弾いた。それは上空高くへ飛んで行き、消滅した。
その間にカイリはマレフィセントとの距離を詰め、約束のお守りを構え、突き出す。しかし約束のお守りは当たらずに空を切るだけ。どこにいるのかと周りを見渡すが何処にも姿は見えない。
一瞬甲板が揺れた。上空にいるのだから揺れているのは当たり前だと思ったが、カイリの真下の板が盛り上がって来ている。咄嗟にコード達がいるところに跳躍すると、先程カイリが立っていた床から先端に緑色の球が付いた杖が突き出てきた。そして次にマレフィセントが床から杖と同時に突き出てくる。
どうやら一瞬にして下に行き、カイリが居る場所を正確に確認して突き出したようだ。以前とはまるで違う動きにコードは呆気に取られていた。
戦闘中にも関わらずコードは疑問に思った。何故自分は今のマレフィセントは以前と違う動きだと思ったのかと言う事に。当然戦ったのはソラ、ドナルド、グーフィー、ビーストの四名のみである。その中にコードは確実に入っていない。
考える暇もなくマレフィセントの雷の第二撃が襲ってくる。しかしこのような消極的な方法でコード達を倒せるとは思えない。それをコード達も分かっているようで避けながらもマレフィセントに三方向から向かって行く。
同時に剣を振り下ろすが、またもやそこにはマレフィセントの姿は無く、後ろを振り向くと自分達が先程まで立っていたところにいた。
驚く暇もなく雷は三人を襲う。そしてコードがカーゴシップの端まで追い詰められた時だった。
「コード!後ろを見ろ!」
リクがそう叫んだのを聞き後ろを振り向くと、見たことのある姿が目に映った。
「ハロー」
そう軽快に答えたのは先程カーゴシップから落ちた、いや降りたテネシウスであった。テネシウスはコードに容赦なく槍を振った。しかし捉えたと思われたが、コードは後ろに体を引き紙一重で避ける。
安心するのも束の間、槍を避けるだけしか頭に入っていなかったのか、マレフィセントが放った雷に直撃した。
響く絶叫が上空に木霊する。痺れる体。手から滑り落ちる剣。視界がどんどん狭くなっていく感覚。マレフィセントの薄く笑う顔を見てコードは気を失った。
「コード!」
更に追い討ちを掛けるようにコードに雷が襲おうが、ギリギリのところでカイリが辿り付き、雷をキーブレードで弾いた。リクも直ぐに駆け寄り、コードを後ろに庇うようにマレフィセントと何時の間にかそこに移動したテネシウスを見る。
「さて、俺はあれだけで用済みなのかな?魔女マレフィセント」
「別にあんな事をやらなくても良かったけどねぇ。だけど上出来さ。ああ、お前はどこかで昼寝でもしていればいい」
「そうさせて貰うよ」
言うが早いか、テネシウスは甲板から跳び、上空高くから降下し始めた。それを見送ることも無く、マレフィセントはリクとカイリを見ている。
リクの額には薄っすらと冷や汗が流れている。先程三人がかりで一撃も浴びせなかったのに二人だけでどうにかなるのか分からないからだ。
だが考えていても何も出来無いのは分かっていた。分かっていたからこそリクは無謀ともいえる行動、マレフィセントに一人で向かって行く。
キーブレードを振り上げ正確にマレフィセントを捉えて振り下ろす。しかし杖に難なく受け止められる。弾かれ、後ろに下がるが諦めずに今度は横薙ぎに振る、それが駄目なら下から、それでも駄目ならフェイントをかけて。しかしどれも杖に止められ、一撃も入る事は無かった。
「フフ、リク。お前はやはり闇に染まっていた時の方が強かったよ」
過去の嫌な出来事を無理やりマレフィセントは引き起こしたが、リクは何も言わずにマレフィセントを攻撃し続ける。そして少し後ろに下がって口を開いた。
「確かに俺は前の方が力は強かったかもしれない。だが」
そこで言葉をとぎり、もう一度向かって行き、キーブレードを振り下ろす。
「心の強さは今の方が強い!」
そう言いながら渾身の力で振り、マレフィセントの杖を叩き斬った。思わぬ出来事にマレフィセントは後ろに下がる。そして笑みを浮かべると闇の中へ消えた。
ホッとするのも束の間、後ろからカイリの悲鳴が聞こえた。振り返るとカイリは弾き飛ばされたのか、今まで立っていたところより少し離れたところで倒れていた。
そしてマレフィセントの杖の先には倒れているコードがいる。依然、マレフィセントは不敵な笑みを浮かべている。
「その力は何なのか私には分からない。だからこうすればいいのさ。このソラに似た子をお前達の目の前で殺すか、それともお前達が先に死ぬか。お選び」
その言葉の後、少し考え、リクはキーブレードをしまった。そして立ち上がったカイリも同様にキーブレードを光に帰す。
マレフィセントがそれを見て嫌な笑みを浮かべた時だ。突然、コードに突きつけられていた杖が弾かれ、マレフィセントの腹部に剣が突き刺さる。
「悪いけど、どちらも僕等はお断りだ」
刺した人物はいままで気を失っていたコードだった。リクもカイリもそれを分かっていたようで特に驚きもしなかった。
刺さった腹部から闇が溢れる。そして何が可笑しいのか、突如マレフィセントが笑い出した。
「何が可笑しい」
「フフフ。私を刺した事は誉めてあげよう。だけど私の真の力はこれだけじゃない。この船諸共殺してやろう」
言った後にマレフィセントは闇に包まれ、闇が晴れた時には巨大な黒龍の姿へと変わっていた。
マレフィセントドラゴンは翼を広げ、飛翔し、カーゴシップから少し離れた所を飛行している。この状態ではコード達には攻撃は不可能であった。
「フフ、そこで大人しく闇の炎で死ぬがいい」
依然とは違い自我があるのか、マレフィセントドラゴンの口からそのような言葉が聞こえた。そしてカーゴシップから少し離れ、カーゴシップの前に回りこむ。そして口を開けたと同時に緑色の炎が噴出される。
咄嗟にリクとコードはエアロガで巨大な風壁を作り、緑色の炎を防ぐ、しかしそれは徐徐に押されて行き、既にカーゴシップに火が付きそうな程迫っている。
「アハハハ!無駄な抵抗は止めた方がいいよ。さっさと楽になってしまいな」
風壁と炎の向こうでそのような声が聞こえた。しかし風壁は弱まるどころか強くなっていく。
「諦めないさ。まだ僕には分からないことが一杯ある。それに、ここに居る人達を守らなければいけないんだ!」
そう叫んだ瞬間、ソード・オブ・ドリームが消え、新たに光からキーブレードが現れた。それは元のキングダムチェーンがついている時と同じ形状だが、全てが純白で光輝いている。
「……いけるか?」
「両断ぐらいなら」
「十分だ」
短い会話をし、コードは横にキーブレードを一閃した。その一閃は緑色の炎を裂き、マレフィセントドラゴンをも切り裂いた。
絶叫が聞こえ、炎が無くなった時にはマレフィセントドラゴンは落下しているところだった。しかし十分な深手を負っているにも関わらず、マレフィセントドラゴンは飛翔し、カーゴシップの上に降り立つ。
「ただじゃ死なないよ。お前達も道連れにしてやる」
そう言った時には口から緑色の炎が溢れていた。コードがキーブレードを構えようとした瞬間、尾で弾かれた。そして成すすべも無いと思った時。
「君もいい加減往生際が悪いね」
コードでもリクでもカイリでもない声がそう言い、何が起こったか、マレフィセントドラゴンの体が下から凍り付いて行く。
マレフィセントドラゴンは驚愕し、そちらの方に気を取られて炎を出す事さえも忘れていた。瞬くまにマレフィセントドラゴンの体は凍り付いていく。
そして氷つかせた本人は、後ろで震えていたウィズであった。
「何か一つの事に縛られるなんてね。そんなのノーバディでもなく、ましてや人間や魔女でもない。ただの亡霊だ」
そういった後にウィズの掌から火炎弾が打たれ、氷付けになったマレフィセントドラゴンを粉砕した。
それをコード達は唖然として見ていたが、少しするとウィズの方を向いた。ウィズと言えば三人を見て微笑んでいる。
「さて、改めてアレクサンドリア、いや、この世界に招待するよ。キーブレードの勇者達」
既にアレクサンドリアと思われる城が前方に見えていた。