君は駆け引きは好き?

時と場合による

どんな時?

自分にメリットにならないような事は絶対やらない

自分のメリットに出来るか、デメリットになるか、それが分らないのが駆け引きだよ?

………

黙らないでったら




ENDLESS DARK Truth 1 〜対談〜


 コード達を載せたカーゴシップはアレクサンドリア城の城下町へ付き、一行はカーゴシップを降りた。城下町は賑わっており、ウィズがいたダリとは正反対である。
 
 ウィズの後ろに付いて行き、たどり着いた所は城。少し古びた感じはするがその存在感は相手を圧倒する。

 ウィズに促され、一行は城の中へと入っていく。装備を整えた兵や、学者のような者たち等様々な者を城の中を忙しなく徘徊している。

「最近はハートレスやノーバディ等がうろついているからね、原因究明とその対策で色々大変なんだよ」

 周りをキョロキョロと見ていたコードに気づいたのか、ウィズは軽く説明した。納得したように頷き、それでもまだ周りを見渡す。

「ウィズ。お前はどこまで知っている」

 今まで黙っていたリクが突然口を開いた。質問の意味が何に対してか分り辛いが、コードには何となく分っている。この世界に何故ハートレスが現れたか。ノーバディとは何か。そして、何故他の世界の自分達の事を彼等は知っているのか、だ。

「さてね。それについては後々説明するよ。まだ役者が揃って無いからね」
「役者?」
「そう、君達が知っている人物も入ってるよ」

 その言葉に全員が反応した。知っている人物と言っても他の世界を周れる人物は数少ない。例としてはグミシップに詳しいシド、レオン達。例外では強い心を持ったビースト等だ。だが後者は中々あるものではないのでレオン達の方が有りえるだろう。コードはそう考えていた。

 ウィズに連れられてたどり着いた場所は会議室のような所だった。長方形の形をした長い机が真中に置いてあり、その机を囲むように椅子が置いてある。

「さて困ったな。まだ来てないようだ」
「誰が?」
「ここの王様と、それからさっき言った役者だよ」
「いつ来る」
「ちょっと待って」

 そう言うとウィズは窓に近づき、空を見上げた。何をしているのか全く理解出来ないのはコード達だ。空を見上げただけで何が出来ると言うのだろうか。

「ああ、もうすぐ来るよ」
「……なんで分る」
「僕は占いというか、そっちの方にも長けていてね自然の流れや星等で分るんだ」
「胡散臭いな」
「まぁ、そうだけど分る物は分るんだからしょうがない」

 苦笑しながらウィズはぶっきらぼうな態度のリクに答えた。そして丁度その時にドアが開き、三人の男が入って来た。

 コードには三人とも誰が分らずに、ただ一人だけ懐かしい感じがしただけだったが、リクとカイリにはその一人の人物は一目で分った。

「あっ!ソラ!リク!カイリ!」
「ティーダ!?」

 そう、ティーダである。両者供に目を見開き、驚いた顔をしている。それもそのはず、ティーダにとってソラ(実際はコードだが)とリクを見るのは久しぶりで、カイリもまさかここにたどり着いているとは思わなかったからだ。逆にリクやカイリにとってティーダが他の世界に来ているとは全く思わなかったからだ。

「ティーダ?」
「ん、ああ。俺達の島で一緒に遊んでた奴だよ」
「あれ?ソラじゃないんスか?」
「残念だがその可能性は薄いな」

 コード達がそう話している間にウィズはその他の二人、ジタンとスタイナーと話初めていた。

「お久しぶりです。王様」
「本当に久しぶりだな。ダリで大分魔力や実力を上げたようだな」
「はは。まぁ、一番駄目だった私ですがダリで二年、しっかり腕を上げて参りました」
「二年前には疑わしかった占いも当たったようで何よりだ」

 ジタンはコード達を見ながらそう言った。

「ところでガーネットは?」
「そう言えば、見えませんね」
「もしやハートレスに!」

 そう言うが早いか、スタイナーは部屋を飛び出そうとするがすかさずジタンが止めた。

「落ち着けって。ガーネットがその変の雑魚ハートレスに負けるわけないだろ?」
「そ、それはそうだが」
「まぁガーネットはその内来るだろ。後は」
「ジタン、ベアトリクス帰ってきたわ。それに、サラマンダーも来てる」

 突然聞こえた声にジタンはびくりと身を振るわせたが、ドアの方を振り向き白いドレスに身を包んだ女性を見ると途端に笑顔になった。

「ただいまガーネット。フライヤ達は?」
「おかえりなさい。フライヤ達はまだ、時間が掛かると思う」
「分った。じゃぁまずはベアトリクスとサラマンダーを交えて会議と行きますか」

 そう言った後暫くコード達を見ていると扉が開いた。そこには剣士の格好をした細身の女性と真っ赤で異様な髪型をした、いるだけで威圧感を醸し出すような男、それから二人の少年、少女だ。

 コード達は開いた扉に気づき、そちらを見やるとコード以外が目を見開いた。何故ならそこにいた少年と少女は彼等が良く知っているワッカとセルフィだったからである。

「ワッカ!セルフィ!」

 一番に口を開いたのはティーダである。ワッカとセルフィもその声に釣られてティーダを見ると同じく驚いた表情をしている。

「ティーダ!それにソラ、リク、カイリ。何で此処にいるんだ?」
「それはこっちの台詞っス!」
「ちょっと良いか?」

 彼等の間に第三者の人物が遮った。ジタンである。ジタンはコード達に近づきながら女剣士と男に座るように促した。

「今からこれまでの経緯、これからの事、それから世界の事を話す。適当に座ってくれ」

 表情は真剣、しかしどこか軽さが感じられるのを不思議に思いながらもコード達は素直に頷き、各自席に着いた。
彼等は対になるように座った。コードが真中に座り、その隣にリクやカイリ、デスティニーアイランドの住人が。そしてコードの前にはジタン、ガーネット等この世界の住人が座っている。

「さて、と。まずはベアトリクス、黒魔道士の村はどうだった?」

 おもむろにジタンが切り出し、女剣士、ベアトリクスが口を開いた。

「っは、黒魔道士の村はほぼ壊滅。生き残った者は全員飛空挺にてアレクサンドリア城城下町に連れて参りました」
「そうか。ブルメシア、リンドブルムに続いて黒魔道士の村まで」

 そう言った時のジタンの顔には明らかに苦渋の表情が浮かんでいた。しかし直ぐに表情を元に戻し、コード達を真っ直ぐに見つめる。

「まずはこの世界の事から教えよう。俺達の世界には三大大国と呼ばれる国々がある。それがここアレクサンドリア、それからリンドブルムとブルメシアと言う国だ。此処以外両国供に滅びてる。それからこの三大大国に劣らぬ場所が黒魔同士の村だ。一見ただの村だが住んでいる奴等の実力は此処やブルメシアに負けてはいない。……これまで質問は?」

 そうジタンが言うと、リクがすぐに口を開いた。

「特に無い。強いて言えば、その三大大国とやらの実力は高いとして、何故此処以外滅んだ」
「それを今から説明するつもりだったんだ」

 苦笑しながらジタンは一度背もたれにもたれ掛け、そして口を開く。

「国を滅ぼした原因、それはお前達の良く知るハートレスの所為だ」
「それだけじゃ無いだろ」
「鋭いな。いや、既に知っているからか。確かにハートレスだけじゃない。ノーバディ共がハートレスを率いて滅ぼしに掛かっている。全く迷惑な話だ」

 まるで騒音か何かを迷惑に思っているような口調。その言葉が何を意味するのかコード達には量りかねた。

「ハートレスが現れたのはつい最近だ。その事は半信半疑だったが、知っていた為にすぐリンドブルムや黒魔道士の村に連絡を取った。その時は大した被害が無かったから余り気にしてはいなかったんだが、四日前位に突然ハートレスの大群がブルメシアを襲った。その報告を聞いて直ぐにリンドブルムへスタイナーを、黒魔道士の村にベアトリクスを送り込んだんだが、その間に滅ぼされてしまった。その報告によれば次は絶対此処を狙うに決まってる。だから俺は昔の仲間を呼び寄せて応戦準備を始めている。そしてその仲間の一人がこのサラマンダーだ」

 先ほどベアトリクスと並んで入ってきた男に目を向ける。男は腕を組んだままピクリとも動いていない。ただ好きは無く、下手に襲えば痛い目に会うのはすぐ分る程その存在感は凄まじいものがある。

「と、言うかウィズを覗いて、俺の隣にいる奴全員が昔ながらの仲間だけどな。ところで、だ。サラマンダー、いつそいつに会ったんだ?」

 サラマンダーは数秒間を開けた後、ゆっくりと口を開いた。

「そこのガキ、ワッカとは俺がお前に呼び出されてここに来る途中に会った。それだけだ」
「OK。それでワッカって言ったっけ?その時なんでそこにいた?」

 いきなり話を振られたワッカは一瞬戸惑ったがすぐに表情を引き締めた。一度セルフィとティーダを見た後、またジタンに向き直る。

「俺も良く分りません。だけど、俺たちの島に黒い物体が現れて」
「そうそう、それでウチラきっと、気づいたらここにいたんや」

 ワッカの科白を遮りセルフィが多少なりに大きな声で割って入った。ワッカは一瞬その事で「うおっ!」と言いながら身を引いたが次にまた口を開く。

「セルフィの言った通りだと思います。それで、変な奴に襲われてる時にサラマンダーさんに助けて貰ったんです」
「サラマンダー、さん、だってよ」

 何故かサラマンダーを指差しながら笑っているジタンを隣にいるガーネットが睨んで止めさせた。サラマンダーは依然腕を組み寡黙に座っている。

「悪い。さてと、多分ベアトリクスの方も同じだろうし、問題はお前達の武器だ」
「武器?」
「そう、三つのキーブレードと、キーブレードとほぼ同等の力を持つ剣、盾、それから杖」
「待て、何故キーブレードの事をお前達は知っている」

 突然リクが割って入った。それもその筈、いくら一度世界を隔てる壁が壊れたと言ってもキーブレードの存在を知っているのは極一部である。

「それはちょっと後で話す。それで、ティーダ、セルフィ、ワッカ、お前達の武器を見せて欲しい」

 そう言ったジタンの言葉を聞いた後、三人は顔を見合わせた。そしてそれぞれ光から武器を取り出した。

「これの事ッスか?」
「そう!それだ!」

 ティーダ、ワッカ、セルフィはそれぞれ、剣、盾、杖を持っている。

「ソード・オブ・ドリーム、ガード・オブ・ドリーム、ロッド・オブ・ドリーム。何故、君達が?」
「ソラ、お前って俺たちを君達って言う奴だったか?」
「そんな似てるのかな?僕はコード。残念だけどソラじゃない」
「似てると言うか、瓜二つだな。性格が少し違うが同じだったらソラとしか思えない」
「まぁそれは後で話して貰うとして」

 ジタンが会話を遮り、咳払いを一つするとまた話始めた。

「お前達は光の扉の存在を知っているだろう?」
「……知っている。だが何故あんたが知っている」
「多分お前達が一番知っている人物から聞いた。この世界を統べる王様とやらにな」
「王様!?」

 ジタンの言葉を聞いてリクは身を乗り出してジタンを驚きが混じった表情で見やった。その様子を見て一瞬ジタンはたじろいだ。

「ど、どうした」
「そいつはもしかして、ネズミのような」
「そう、それだ」
「いつ会った」

 ジタンはリクの表情を見てまたたじろいだが、リクから多少の焦燥を感じ、何かがあった事を悟った。

「まぁ、その事については他は良く分らん。とりあえずさっきの話に戻すが光の扉についてだ」
「ソード・オブ・ドリーム、ガード・オブ・ドリーム、ロッド・オブ・ドリームによって出現する、キングダムハーツへ続く扉。しかしそれがこの国と何の関係が?」

 その言葉を聞いてジタンは嬉しそうに微笑んだ。

「やっと本題に入れるな。コードって言ったっけ?光の扉の出し方は分っているようだが、闇の裏側について知っているか?」
「闇の裏側?」
「光の裏側でも良いんだが、こんな時だ、闇の裏側の方がシックリきてな。それは良いとして、闇の裏側、それはノーバディ達の最終目的地だ」
「最終目的地?」
「ああ。これはただの推測だが、闇の裏側と言うのは恐らく何も無い、無の世界だ」

 そこで一度区切り、目の前にいる全員を見渡す。誰も喋らないのを確認してまた口を開いた。

「無の世界、そこから闇と光が生まれる可能性がある。つまり光と闇の均衡を保っている。さて、それがもし闇に染まったとしたら?」
「……闇が光を覆い、光を無くし、世界を闇で覆い尽くす、か?」
「あくまでも推測だが、俺はそう考えている。さて、その無の世界へ行くにはどうすれば良いか。答えは【ID】だ。まずキングダムハーツの扉の前へ行き、キングダムハーツに【ID】を挿入する。するとあら不思議、無の世界への道が通じる訳だ」

 最後の方でコードは少し脱力しかけたが隣でリクが神妙な顔をしているのに気づき、またジタンを見据える。リクは一度目を閉じ、数秒考えた後目を開けてジタンを真っ直ぐに見る。

「大体分った。だが何故光の扉が関係ある。それから、俺たちに何をして欲しい」
「おお、話が早くて助かるな。まぁ光の扉は手っ取り早く言うと脱出経路だな。無の世界から出るのにも光の扉が必要だ。それから何をして欲しいか、だが、単刀直入に言うと俺達の世界を助けて欲しい」
「……断ると言ったら?」

 ジタンは微笑ながらリクを見た。自分が思った通りに事が進む。そう思うと何故か笑えたのだ。

「残念だけど断れない。何故ならだ、今の状態だとお前達はキングダムハーツへつけない。その理由がお前達がグミシップを持っていないと言う事と、もし持っていたとしてもハートレス共のグミシップの方が遥かに強くてたどり着けない。そこでだ、俺たちの国を助けてくれたら俺たちの船、インビジブルを貸そう。インビジブルならグミの技術も取り入れ、そこらのハートレスのグミシップなんて何でもない」
「だが俺達には世界を通る扉がある」
「それも残念だが無理だ。キングダムハーツへ繋がる扉は一つだ。仮に光の扉を使ったとしてもキングダムハーツ内へ行ってしまえば意味がない。行かなければ行けないのは外だ」

 そこまで捲し立てると両者共に黙ってしまった。リクは腕を組み、目を瞑って考えている。ジタンは先ほどと違い真剣な表情でリクを伺っている。

「僕は、別に助けても良いと思うけど」
「コード、俺達には時間が無い。と、言いたいところだが」

 そこで一度区切り、ジタンを見て微笑した。ジタンもそれを見て表情を和らげる。

「俺たちの目的を果たすにはどうやら要求を呑まないといけないようだ」
「そう言うことだ。まぁ世の中ギブアンドテイクって事で」
「良く言う。もしこの世界に戦いが無くてもどうせ貸すつもりでいた癖に」
「はは、ばれてたか」

 軽口の応酬。それだけ相手に気を許した事を伺える。が、場が多少和やかになったと思ったその時、部屋の明かりがすべて消え、真っ暗になった。即座に全員立ち上がり、武器を油断無く構える。

「そう構えるな。話をしに来ただけだ」

 その言葉と共に闇から一人の男が現れた。