そう言えばさ、信頼って何?

信頼?信じて頼る事だ。

いや、そうじゃ無くて。……君の意見は?

さあな。俺には仲間なんて居ないから知らないな。

随分寂しい思いをしてきたんだね。

そうかもな。ただ俺は裏切られるのが嫌だったのさ。

裏切られた事があるの?

いや。だけど裏切られた人を見たことは沢山ある。

結局答えになってないね。

分からないんだからしょうが無いだろう?

なんだそれ。

哀れむな。



ENDLESS DARK Second Prologue 2 〜仲直り〜


肌寒い風が吹く中、ソラは起床した。隣では不規則に鼾をかいているドナルドと規則的に鼾を掻いているグーフィーが寝ていた。鼾のかきかたは違うのに二人とも同じ大きさの鼻提灯が出来ていた。それに苦笑しながらソラは空を見上げた。眩しい。最初の感想がそれだった。日は朝日なのに嫌に眩しかった。しかしそれはソラにとって祝福されているような気がしていた。数十秒朝日に見とれていたが、とりあえ二人を起こし、先に進む事にした。

「ドナルド、グーフィー。朝だよ」
「ふあ、お早う。ソラ」
「お早うグーフィー」

とりあえずグーフィーは目が覚めた。しかし依然としてドナルドは起きない。ソラは困ったがグーフィーが何か良い考えが浮かんだのか、ドナルドの耳に顔を近づけた。そして。

「ドナルド?デイジーが早く起きろだって」
「デイジー!?待ってファイアだけは!ってあれ?」
「グーフィー、ドナルドに一体何があったの?」

ソラはグーフィーに聞こうとしたが、ドナルドが顔を赤くしながらグーフィーを止めた。しかしソラがしつこく聞くのでついには諦め、少し離れた所で耳を塞いでいた。そんなに恥ずかしいのだろうか。そんな事を思いながらグーフィーの言葉に興味津々と耳を傾けた。

「ドナルドはね、早く起きないとデイジーに怒鳴られるんだ」
「…そんだけ?」
「うん」

期待して損した。ソラはそう思った。だがドナルドにとってはとても恥ずかしいようなのでソラは今日からドナルドをこれでからかおうと決めた。ドナルドがまだ耳を塞いでいるのでグーフィーが背中を叩き、ドナルドを呼んだ。

取りあえず焚き火の始末をし、三人はまた何時終わるであろうか分からない道を歩き出した。昨日と同じように三人は歩いている。しかし今日は何かが違った。ソラは何か違和感を覚えたので思わず後ろを振り向いた。すると。

「プルート!」

が居たのだ。依然プルートは王様の手紙を持ったままである。ソラ達がプルートに気付きプルートの方に向くと、前のように走りださずにそこに座っている。そしてドナルドが近づくと王の手紙を渡した。三人は取りあえず手紙の封を切り、内容を見ることにした。

ソラ、ドナルド、グーフィーへ

今僕は知っての通りキングダムハーツの中に居る。勿論リクと一緒にね。
それでこの手紙には光の扉の事が書いてあるから。
まず初めに、光の扉は実在しない。
だけど作る事は出来る。その為に君達の武器、キーブレード、ガード・オブ・ドリーム、ロッド・オブドリームが必要なのさ。
ソード・オブ・ドリームの代わりがキーブレードだから心配は要らないよ。
君達は強く光の扉を作りたいと念じなければいけない。
それもかなり強く。三人の心を一つにしなければいけないんだ。
それが出来れば後は三つの武器を天にかざせば良いだけ。
これが出来るのは君達だけなんだ。頼んだよ。



内容はこのような物だった。何故プルートが急にこの手紙を渡したのは謎だが、三人は只の気まぐれと決め込んだ。依然、プルートは後ろで座っている。

読み終えた後三人は顔を見合わせ頷いた。光の扉を作ろうとする意志表現だ。早速三人は各々の武器を取り出し光りの扉を作りたいと念じ始めた。そして一斉に武器を天にかざした。

「…何も起こらないね」
「でも書いてある通りにやったぜ!?」
「もう一度やってみよう」

グーフィーの一言にまた頷き先程と同じように光りの扉を作りたいと念じ、武器を天に掲げた。しかしやはり何も起こらない。周りは先程から静寂に包まれている。その後三人は数十回とやったが一回も出来なかった。いい加減痺れを切らしたソラが怒鳴った。

「何だよ!全然出来ないじゃん!」
「ソラ!そんな事言っちゃ駄目だよ!」
「そうだよ。もう一回やろう?」

ドナルドが言った後グーフィーも優しく言った。渋々とソラももう一回やる事にし、また念じた。結果は同じ、何も起こらない。いい加減ソラも怒り、キーブレードを地面に叩き付けた。その音とソラの声に驚いたのか周りの木々の鳥が一斉に青空へ飛び立った。

「やっぱり出来ないじゃん!王様適当な事を書いたんじゃないよな!?」
「王様はそんな事しないよ!」
「じゃあ何で出来ないんだよ!!」

遂にドナルドとソラは口論を初めてしまった。グーフィーには止める事が出来ず、ただおろおろしているだけだった。既に日は真上に来ている。どんどん口論は酷くなっていく一方である。ソラが何かを言えばドナルドが反論する。ドナルドが正論を言えば、ソラは屁理屈を言う。それが無限に続いている。いや、ソラが先に止めた。と言うより逃げた。

「もう良いよ!ちょっと俺散歩してくる!!」
「ああ!良いよ!行ってらっしゃい!」

ソラはそのまま何処までも続く道では無く、緑の草原の方に歩いて行ってしまった。グーフィーは追いかけようとしたがドナルドに止められ、その場に留まる事になった。ソラが歩いて言った方とドナルドを交互に見るが、結局は虚しさが残るだけだった。

ソラはしばらく緑の草原を歩きながらドナルドの態度と光の扉を作れない苛立ちに腹を立てていた。

道を歩く事数分、突然周りが真っ暗になった。何事かと周りを見回すが特に変わった物はない。いや、あった。大きい獣の様であった。何かと巨大なハートレス、ベヒーモスに似ている。角こそ無いが、姿はとても似通っている。

真っ暗にしたのがこの獣だとは考え難かったが何故か殺気がソラに向けられていた。突如手の周り、そして手から一直線上に光りが現れ、光は大きい鍵へと変わった。直ぐにソラは鍵、キーブレードを構え、獣と対峙した。

「グオオオオオオオオ!!」

獣が一声吠えた。すると周りの木々は振動により葉が吹き飛び、草がその獣を中心に倒れていった。無論ソラにも無害では無かった。急な音の振動が迸り思わずキーブレードを落としてしまった。慌てて拾おうとするが既に獣はソラに向かって飛びかかっていた。避けきれず、対処のしようも無いので思わず目を瞑る。が・・・痛みは無い。代わりに獣の咆吼が聞こえた。恐る恐る目を開けると前には杖を持ったアヒル、ドナルドが獣と戦っていた。勝っているとは思えないが。

「ドナルド!」
「ソラ!早くキーブレードを拾って!」
「ああ!」

ソラは素早くキーブレードを拾い獣と悪戦苦闘しているドナルドの元へと向かった。ドナルドは杖でバシバシ叩いているが、やはり攻撃力に乏しく、殆ど効いていない。実際堅い皮で覆われているから効くはずもないが。勿論魔法も使っているがそれも殆ど効いていたかった。

「てやあああ!!」

ソラが叫ぶと同時に獣に斬り掛かった。しかし堅い皮の前には無力であった。ドナルドと力を合わせて戦うが今だ傷一つ付かないソラとドナルドが奮闘している最中にグーフィーが駆けつけた。三人そろえば怖い物は無い。そういう気持ちがしてソラは攻撃を強めていった。

「ソラ!こいつは目が弱点だ!目を狙って!僕が援護するから!」
「分かった!任せたよ!ドナルド!」

ドナルドはサンダガを打ち、獣の注意を逸らし、ソラとグーフィーはその間に文字通り、一気に目の前まで詰め寄った。そして盾とキーブレードをたたき込む。叩いた瞬間、獣は大きい叫び声を上げて、消えた。跡形も無く。

ソラはホッと胸を撫で下ろすと同時にキーブレードを光の中に還えした。

「ドナルド。どうしてあいつの弱点が目だって分かったの?」
「僕は一応あいつの全箇所を狙ったんだ。そして最後に残ったのが目だった。只それだけの事だよ」

ドナルドは笑いながら言った。ソラはその時仲間と言う物がとても良い物だと改めて思った。そして先程までドナルドと喧嘩をしていたのを思い出し、申し訳なさそうな顔をしてドナルドの方を向いた。ドナルドも同様に申し訳なさそうにしていた。

「ドナルド、さっきはご免」
「…良いよ。僕も悪かったし」

ソラとドナルドは謝ると笑い、仲直りの印に握手をした。そしてソラはまた明るい表情に戻り、ドナルドとグーフィーの表情も明るくなった。

「…さあ!もう一回試してみようよ!」

グーフィーがそう言うとソラとドナルドは頷いた。そして三人はまた光の扉を作りたいと念じ、武器を天に掲げた。

―三人の心を一つにしなければいけない―

各々の武器から天に向かって光りが伸びた。その後光はソラ達の目の前に落下した。そして、目のまえに目映い輝きを放つ真っ白な扉が現れた。