ねえ、死ってどんな物かな?

……その言葉を簡単に使うな。

え?

死とか殺すとかそういう類の言葉を使うな。死んだりしたらそこまでなんだ。未来も、何も残らない。

それって言うのと関係あるの?

そんな事を言って本当に死んでしまったら嫌だろう。

そんなもんかな?それより君が未来という単語を知っているとは思わなかった。

殺すぞ。

あ、使った。


ENDLESS DARK Betrayal 2 〜決意〜


リクの出血は酷かった。やはり直ぐに逃げていれば良かったであろう。まだ息はあるが、このままでは非常に危険だ。それを知っているのでコードは出来るだけ速度を速めた。カイリもその速度に必死に必死に合わせている。表情はやはり浮かない。

コードはテントを抜け、出来るだけ森の奥へ向かった。森の奥なら見つかる可能性も低いからだ。但し、幹が大きく、かなり周りを見やすいので見つかる可能性もかなりある。

とりあえず見つかり難そうな場所を探し、リクを寝かせた。コード達は根本に空洞を見つけ、その中に入ったのだ。空洞は以外と広く、涼しいので暑くなった体には丁度よい場所であった。

コードはリクを寝かせると、ケアルガを掛けた。するとリクの周りに淡い緑色の光が現れ、リクの傷の場所に集中していく。その後少しずつだが、リクの傷は治っていった。コードもカイリもホッと胸をなで下ろすが、カイリは今だに浮かない顔をしている。

そんな時、突如ソラの声が空に響いた。

「あ〜さっき言い忘れてたけど、もし五分以上経って見つからなかったら、そのまま逃がしてやるよ。んで、もし五分以内で見つかったら、この星ごと吹き飛ばす。あ、でも五分以内に見つかってもチャンスをやるよ。俺と戦ってお前等が勝ったら逃がしてやるよ。まあ無いと思うけどな。じゃ、今そっちに行くからな」

ソラの声は明るく、憎たらしい声であった。今の心境でこうも明るい声で言われると何故かコードはむかむかしてきた。

(一体ソラはどうしたんだろう。前はこんな奴じゃ無かった筈だ。……あれ?僕はソラに会ったことがあるのかな?駄目だ。全然思い出せない。今はそんな事よりどうやってソラから逃げ切るか。下手に動くと見つかる可能性があるな。此処で動かずにいる方が安全か)

コードはリクの治療をしながらそのような事を考えていた。考えれば考えるほど分からなくなっていく。特に自分の事は。

暫くすると、リクの治療が終わった。傷は塞がったが今だリクは起きあがらない。

「ねえ、コード。何でソラは私達を殺そうとするのかな」

急にカイリが消え入りそうな声でコードに話しかけた。

「……考えられる可能性は三つ。一つ目は誰かに操られて僕達を殺すように命じられている。二つ目は全て自分の意志で殺そうとしている。三つ目は誰かに脅されている。あの表情からして三つ目は無いと思う。どうせなら一つ目が良いね」
「どうすればソラは元に戻るのかな?」
「……一番可能性が高いのはソラを操っている奴を倒す。難しい方法はソラを操っている術か何かを解く。今出来るのは後者だけだね。どんな風に操られているか分からないから難しいけどね。更に操られているかどうかが分からないし」
「そう」

カイリはそれを聞くと俯いてしまった。何せソラが元に戻る希望が少なすぎるからだ。

「君は何の為に戦うの?」
「え?」

突然の質問にカイリは戸惑った。

「君は何の為に戦うの?」
「…私は」

カイリはディスティニーアイランドで三人と、リクとそしてソラと遊んでいる時の事を思い出した。一番楽しかった一時。あの時に戻りたい。そして何より。ソラと一緒に居たいという思いがこみ上げてきた。

「私はソラを助けたい!!」

そう言うと同時にコードの持っている約束のお守りが光り、消えた。その後にカイリの手が光り、光は真っ直ぐに伸びていき、約束のお守りを型どりカイリの手に治まった。それを見たコードはカイリにニッコリと笑った。

「なら此処でくよくよしてもどうしようも無いだろ?気をしっかり持って、ソラを助けなくちゃ」

カイリはコードに微笑み返した。

「カイリ、もしソラに見つかったら最初は僕が行く。まだリクが心配だからカイリはリクを見てて欲しい」

カイリはコクンと頷いた。コードは安心するとその場に座りこんだ。強気に言った物の、ソラが何故自分達を殺そうとするのか分からない。コードの額からは絶えず冷や汗が流れていた。そんな時。

「どこかな〜?さっきこの辺で声がしたんだけどな〜」

態とらしい声。直ぐに直感した。もう既に場所はばれていると言う事を。

(クソ!声が大きすぎたか)

コードは胸中で毒づくと、カイリを見て、リクを頼むと小声で言った。カイリは一瞬躊躇したが、直ぐに頷いた。コードはそれを確認すると、立ち上がり、ソラの声がした方へ歩きだした。

ソラは大木の幹に寄りかかっていた。まるでこちらが来る事を分かっていたかのように。そしてコードの事を確認するとゆっくりと立ち上がる。そしてソラの右腕に闇が溢れ、ソード・オブ・デストロイが出現した。

「ソラ、一体何故こんな事をする」
「しょうがないな。俺は十三機関を取りに来たの。だからお前等はただのついで。って言うかただの暇つぶし。これで良い?」

面倒臭そうな返答が返ってきた。暇つぶし。そんな事の為に今リクは死にそうで、カイリは悩まなくてはいけないのか。またコードには沸々と怒りがこみ上げてきた。が、コードはその怒りを必死に抑えている。

「ソラ、僕は君を止めてみせる!」

コードが叫んだ瞬間、コードの手が光った。先程カイリの手に渡ったのでキーブレードが出てくる筈は無いにも関わらず。そして光はやがて剣になった。キーブレードではなく、ソード・オブ・ドリームに。

「へえ、ソード・オブ・ドリームか。止めてみせるか。やってみな!」

跳躍し、コードの後ろを取った。そのままソード・オブ・デストロイを力強く振った。コードはその攻撃を受けずに避けた。そしてソラから間合いを取り、立ち止まった。まだ戦う事で迷いがあるのだ。

しかしソラはそんな事はお構い無しにコードに攻撃を続ける。だが、コードが避けてばかりでつまらないのか、急に立ち止まった。

「お前さあ。少しは反撃しろよ。殺しがいが無いじゃん」
「……殺すとか簡単に言うな。ソラ、まだ戻れる。もう止めるんだ」

ソラは溜息を付きながら呆れた顔をした。そしてソード・オブ・デストロイを構え、コードに突っ込んで来た。そして横に振り回す。

「戻らねえよ」

冷たい一言と共にソード・オブ・デストロイの容赦無い一撃がコードに迫った。とっさにソード・オブ・ドリームでガードする。が、そのまま吹き飛ばされ、大木に背中を強打した。

多少吐血をしたものの、戦えないわけではなさそうだ。コードは先程の一撃で覚悟を決めた。ソラを止めると。真っ直ぐな眼でソラを見据えた。そして同時に跳躍………。