決意をするって事はさ、生半可な決意じゃ駄目なんだよ。

そうだな。

一度決めた事は責任を持って貫き通さないといけないと僕は思うんだ。

そうだな。

僕の話聞いてる?

そうだな。


ENDLESS DARK Betrayal 3 〜小悪魔〜


空中で剣と剣がぶつかり、生じる激しい金属音が辺りに響―――かなかった。

「馬鹿正直に攻撃すると思うな!」

ソラは最初からソード・オブ・デストロイで受ける気は無かったらしく、途中で身を反転させ、コードのソード・オブ・ドリームを避けると同時に蹴りを腹部に入れた。しかしコードは瞬時に判断し、腹筋に力を入れ、痛みを和らげた。それでもソラの蹴りは強力らしく、痛そうに腹部を押さえながら着地する。

ソード・オブ・ドリームの先から巨大な炎の弾が放たれた。炎の弾は真っ直ぐにソラの方へと向かって行く。しかしソラは避ける素振りを全く見せなかった。炎がソラの前に来たときにソード・オブ・デストロイを軽く振る。するといとも簡単に炎の弾は真っ二つになってしまった。

ソラはコードと同じ様に炎の弾を放つ。同じ攻撃、挑発としか受け取れない攻撃。コードはその挑発に乗り、ソラと同じようにソード・オブ・ドリームを横に振るった。が、斬れた事は斬れたのだが二つに分かれた後に曲線を描いてコードに再度二つの炎が向かって行く。

「これは!?」
「驚いたか?これも俺が求めた力のおかげさ」

コードの耳にはソラの声は入っていなかった。二つの炎は消える事を知らず、ただコードを追いかけ続ける。一度後ろに跳び、ブリザガを打って何とか消すことが出来た。が、目の前にはソラが迫って来ていた。

「駄目だろ?戦闘中なんだから注意は何時も以上にしとけよ」

同時に肩に激痛が走った。ソード・オブ・デストロイがコードの右肩を貫いている。不意に剣から凄まじい熱がコードを襲う。痛みに耐え切れずにコードは叫び声を上げる。それをソラは愉快にみている。

煮えたぎる怒りの熱棒。もっともこれは剣だけどな」

見ればソード・オブ・デストロイは熱で赤くなり、肉を焼く音を立てている。コードの右肩は異臭を放ちながら内側から焼かれている。コードは力を振り絞り、ソラを思いっきり蹴り、剣と一緒に吹き飛ばした。

肩を押さえつつケアルガを掛けるが、余りにも酷すぎて治る気配が無い。剣を握る手も力が入らずに、ソード・オブ・ドリームは地面に落ちた。それを見たソラの表情は以前には考えられない様な笑顔である。無邪気では無い。もっと、邪悪な、小悪魔のような。

ソラはゆっくりとコードに近づき膝を付いているコードの顔を蹴り上げた。右肩の激痛が酷く、抵抗も何も出来ないコードは無防備であった。

ソラは続けざまに顔を鷲掴みにし、振り回して巨木に投げつけた。コードの全身に激痛が走る。既に意識は朦朧としている。目を閉じたら気を失ってしまうであろう。

更に追い打ちを掛けようとソラはコードに向かって走った。コードを思いっきり蹴り上げ空中で拳で何回もコードを殴る。剣で刺せば一瞬で終わるにも関わらず、コードを殴り続けている。

最後にソラは踵落としでコードを地面に叩き付けた。それでもコードは尚も意識を保ち続けている。

「がは。…ソ……ラ…」
「何だよ。まだ意識があるのか。しつこいな」

良いながらソラはコードの頭に足を乗せた。そのまま徐々に体重を掛けていく。コードの頭蓋骨がミシミシと音を軋み立てている。コードの意識はそこで途絶えた。

ソラの右方から一本の漆黒の剣が回りながら飛んできた。それに気付いたソラはコードから足を離し、後方に跳び、剣が飛んで来た方を見た。が、そこには誰も居ない。

「こっちだ」

後ろから声と頬に拳が同時に来た。

「がっ!クッ。…酷ぇなぁ。リク。それが親友に対してする事か?」
「その親友にナイフを突き刺したのはお前だろう」

へへ、と笑いながらソラは笑顔でリクを見た。リクの手にはキーブレード、過ぎ去りし思い出が握られている。ソラはソード・オブ・デストロイを構え直し、リクに向かって一直線に走り出した。

リクはソラの攻撃を回転しながら避け、同時にソラの首筋に手刀を叩き込んだ。ソラはそのまま地に伏した。

「単純なのは変わってないな」

そのままコードの方へ歩み寄り、肩の傷を見た。酷い。一言で言えばそうであろう。肩からは異臭が立ち込め、火傷の後が広がっている。

丁度その時、後ろに何者かの気配がした。しかし気付いた時には遅く、リクの肩の部分から刃が突き出ていた。

「リクは昔の注意深さが無くなったんじゃないか?」

後ろを振り向くとソラが笑顔でリクを見下していた。

一端リクはソラから離れた。コードの様に火傷を負うような傷は無く、内心ホッとしたが危険には変わりない。肩に手を当て、自分が出来る回復魔法、ケアルラを掛けたが、ソラは回復をさせる暇を与えないようだった。

既に炎の弾が四つ放たれている。リクは四つの炎の弾を全てはじき返した。一個一個打ち変えす度に肩に激痛が走るが、表情には出さない。目隠しをしているので更に表情を隠せる。

ソラの横を炎の弾は通過し、後ろの巨木に当たり、爆音が響いた。その音を合図にソラはリクに向かってソード・オブ・デストロイを振り上げていた。リクは咄嗟に避けようとするが体が動かない。そして後数十センチというところであった。

「ソラ!」

聞き覚えがある高い声が響き、ソラの動きが止まった。ソラが声をした方向を見ると、そこにはカイリが居た。カイリの右手には約束のお守りが握られている。そしてその握っている手は微かに震えている。

「遅かったな、カイリ」

ソラがニタリと笑うとソード・オブ・デストロイはリクの肩に食い込んだ。肩から大量の血しぶきが飛んだ。地面を赤で染めていく。その様子を見るとカイリの目には涙が溜まってきた。

リクはそのまま苦しそうに倒れた。口から、肩から止めどなく血が流れ続ける。

「ハハハ!折角腹の傷が治ったのにな!」
「クッ。カイリ……逃げろ」

カイリはリクの言葉を聞いていたが、逃げる気にはなれなかった。自分の手の中にあるお守りを見、決心した。お守りを難く握り、ソラを見た。ソラは依然として表情を変えない。

「リク、前も言ったでしょ?私だって戦う!ソラを、ソラとリクと一緒に島に戻る為に!」

約束のお守りが光輝き、形を成し、鍵となった。しかも以前ソラやコードが持っていた時よりも純白になった約束のお守りとなって。

ソラはそれを見て一瞬顔を歪めたが直ぐに笑顔に戻した。剣を構えずに肩を落としている。完全にカイリを舐めているのだ。

「良いぜ、さっさと来な?俺がその夢とお守りをぶち壊してやるよ」

カイリの体は自然とソラに向けて動いていた。